長い長い博覧会の済んだ朝の景色は今まで観たものとは全く違うものになっていました。僕は雑踏の中一人新宿駅東口へ向かいました。博覧会の熱気を未だ持つ人々は幸せで、終わりの余韻を味わう人もまた幸せでしょう。手を繋いで歩いていた少女は何時の間にかしら居なくなっていました。残っているのは少女のひんやりとした硝子のような手の感覚だけ。
新宿駅に着いた僕は困りました。なぜなら少女が居なくなってしまったからです。これから何処へ行くのかその少女は知っていました。ここからは何処へでも行くことができます。その一方でそれは何処へも行けないことを表していることと同じであるように僕には思えました。