辰巳泰子さん選

辰巳泰子さんのはてなダイアリー辰巳泰子の新作・歌日記で、枡野浩一のかんたん短歌blogへの投稿歌への選、予選通過二首のうち一首が選歌一覧(8月6・7・8・9日分から)本選通過しました。

  • 思い出す道 愛のある記憶だけ残ってるのでもう通らない

が選ばれたのですが、

  • 思い出す道 愛だけの記憶しか残ってないのでもう通らない

も候補にあったけれど、「愛だけ」と云ってしまうと少々殺伐としている感があり、「愛のある」といった方があたたかみがあって後半の「もう通らない」と温度差ができると感じて前者を選んだのです。
記憶には映像も匂いも音も空気の湿り気や雰囲気のような感覚的なものの方が残ります。似た感覚(官能)を感じたとき、たとえば同じような景色、同じような匂いや音、空気。そんなものを感じたときに憑依されたかのように記憶と感情が蘇ります。それを僕は止めることができません。
辰巳さんの日記のエントリ「選後の印象」に書かれていたことに対して。ひょっとしたら仮想のキャラクターを登場させて「無自覚なロマンティシズム」を演じさせていることもあるのかも知れません。
「愛がない」とは「無関心」であることであって、それを歌にするのは難しいことだと思います。